中村 文香(なかむら あやか)


国家資格キャリアコンサルタント。となりのキャリア研究所代表。理系の研究科を卒業後、大手メーカーに就職。研究開発、人事に従事した後、フリーランスとして独立。


自信がなく、一歩踏み出せなかったかつての自分

現在のお仕事内容について教えてください。


フリーランスのキャリアコンサルタントとして活動しています。法人と個人と、2つの活動領域があります。


法人のクライアントに対しては、オフィスを定期的に訪ね、主に20代〜30代の若手・中堅社員の育成サポートやメンタリングのほか、キャリアやチームビルディングをテーマにした社内ワークショップの主催、経営陣への組織・人事面のアドバイス、採用のサポートも行なっています。


個人に対しては、アラサーからアラフィフの方の転職を見据えた自己理解サポートやコーチング、具体的なアクション計画の策定等を行なっています。また、女性のキャリア支援にも携わっており「私って何がしたいんだろう」と悩む方々に日々寄り添っています。


「人間が幸せに生きるには?」という問いが私の仕事の一貫したテーマです。価値観が多様化した現代は、生き方やキャリアを自由に選択できるようになった反面、何通りもの選択肢の中から自分でルートを決め、進んでいかなくてはならない場面が増えています。それはまるで、筋書きも攻略本もないRPG(ロールプレイングゲーム)のようなもの。しかも、ゲームと違い、自分や周りの人間の “特性” も、使える “技” も目には見えません。そんな不確かな環境で、自ら意思を決めて進んでいくには「軸」が不可欠です。


選択肢が多様な時代において、人が「幸せに生きたい」と願うとき、自分の軸を掘り下げ見つけることは、もはや通過儀礼化しているとさえ思います。それをお手伝いすることで、彼/彼女ら、あるいはチームに何らかのプラスの変化、化学反応を起こす。そんな「触媒」のような存在でありたいと思っています。

中村さんは「リケジョ」として大学院を卒業後、メーカーの研究職に就いていたそうですね。

もともと理系を選んだのは、文系の学科よりも潰しがききそうだと思ったからです。女子がみんな文系に進むので、逆張りで理系に行ってやろうという気持ちもありました。


でも、実際に理系の学部に入学して授業に出てみると、これがあまり面白くない(笑)。興味を持てなくて、何も頭に入ってこないんです。


それでも、大学の授業なんてそんなものなのかなと自分をごまかして、研究室に入れば何か変わるかもしれないと、大学院ではバイオマスエネルギーに関する研究室に所属。しかし、依然として「何でこんなことをやっているんだろう」という気持ちが消えることはありませんでした。


振り返れば、当時は圧倒的に自分に自信がありませんでした。現状に対して違和感があっても、それを変える勇気がなくて。社会に放たれることも不安でいっぱいで、理系院卒の自然な進路として、研究職としてメーカーに就職しました。


そんな状態で就職したこともあり、仕事もやはり楽しさを感じることはできませんでした。そもそも、ものに対する興味がないことがメーカーの研究職にとっては致命的でした(笑)。職場の方は協力的でしたし、任されている仕事自体が会社にとって意義があることだは理解できるんですが、それでもモチベーションは上がらず、与えられた仕事をそれなりにこなす日々が続きました。

人生を変えるメンターに出会った

その状態から、どのような経緯でキャリアコンサルタントとして独立する道を選んだのでしょうか。


転機になったのは、たまたま書店で手にとった本で知り、訪れた「転職バー」で紹介していただいた女性との出会いです。フリーランスでキャリアコンサルタントをされていた方で、大変親身に私の相談に乗っていただき、気づけばお姉さんメンターのような存在に。


とにかく私の可能性を私以上に信じてくださったことが、何よりも衝撃的でした。圧倒的に自信がなく、何事も「どうせ無理だ」と決めつけていた私でも、彼女と話していると、こわばった心が解きほぐされていく感じがしたんです。そこから私は少しずつ変わり始めました。


最初の変化は、彼女の勧めで、心理や自己理解をテーマにしたワークショップに足を運ぶようになったこと。これが本当に面白くて、「自分の心の動きを理解できることがこんなに楽しいのか」と。人や心理といったテーマが、私の本当にやりたいことなんだと確信が持てました。


思えば私は、小学校の頃から「人分析オタク」でした。転校が多かった私は、新しい学校でいち早く友達を作るため、いつの間にか「Aちゃんは前の学校のBちゃんに雰囲気が似ているから、これをやったら喜んでくれるかな」といったことを自然に考えるようになって。近所の本屋さんに行っては心理テストの本ばかり読んでいましたね。その経験が、人や心理への関心に通じているんだと思います。

メンターのお陰で自信をつけた私は、キャリア系の資格を取得し「人事に行かせてください」と会社にかけあいました。人に携わる仕事がしたいと思ってのことです。すると、環境の運もあって、思いの外スムーズに認められ、晴れて研究職から人事へと異動することができました。


しかし、念願の人事の仕事も、必ずしも思い描いていたものではありませんでした。大きな組織だったので、立場上、社員の立場に寄り添った仕事をしきれないことが増えてきて、必ずしも馴染むことはできませんでした。


再びにメンターに相談すると「私の仕事を手伝いながら、独立を目指すのはどう?」と。フリーランスのキャリアコンサルタントとして生きるという道が開けたのはこのときです。「それだ!」と思った私は、思い切って会社を退職しました。


メンターの仕事を1年半ほど見習いながら、キャリアコンサルタントの国家資格も取得。本格的に自分で活動を始めてから、現在は2年弱になります。

メンターとの出会いが大きなきっかけだったんですね。キャリアコンサルタントとして、今後挑戦していきたいことはありますか?


私にとってのメンターのように、その人の可能性をその人以上に信じ、その人の人生のターニングポイントになれる人間が理想です。メンターとの出会いがなければ、もしかすると私は今でも、いろいろなことを諦め、毎日楽しく感じられない仕事を続けていたかもしれません。たった1人の人間との出会いが、人生を変える。私自身がその “1人” になると同時に、人にプラスの影響を与えられる触媒のような人材を増やすことにも挑戦したいです。

また、自分が心から共感するクライアント企業を一層強くサポートしていきたいとも思っています。人やチーム、組織の成長を支援することで、社会的意義のある企業がより大きなインパクトを与えることに貢献していきたいですね。