大橋 裕介(おおはし ゆうすけ)
大手人材会社のマネジャーとして製造業の採用支援に従事。また、個人の働き方や組織の変革を応援する一般社団法人「Work Design Lab」のメンバーとしても活動する。有志団体「One G-HR」の発起人でもあり、キャリア構築や働き方改革をテーマにしたイベント登壇実績多数。
持ち前の「巻き込まれ力」がトリガーに
現在の活動内容について教えてください。
人材会社のマネジャーとして、自動車業界や電機メーカーなど大手製造業向けの中途採用支援を行っています。
本業以外の活動としては、個人の働き方や組織の変革を応援する一般社団法人「Work Design Lab」に所属し、主に若手ビジネスパーソンのキャリア形成を支援する活動を行っています。具体的には、キャリアイベントへの登壇のほか、首都圏のパラレルワーカーと地方をつないで地方創生の支援をしたり、大企業で新規事業に取り組む若手担当者同士をつなげる交流会を開催したりしています。
また、キャリア形成のために社内外の人脈をつくりたいメンバーが集まる有志団体「One G-HR」の発起人としても活動しています。
若手ビジネスパーソンのキャリア支援をするようになったきっかけを伺えますか?
かつての同僚でWork Design Lab代表の石川と再会し、活動に誘われたことがきっかけです。私が名古屋勤務していた2016年のことです。
当時、部内の働き方改革推進を担当していた私は、石川が名古屋に出張してくるタイミングで勉強会の講師をやってもらえないかと依頼。すでに働き方改革をテーマにさまざまな活動をしていた彼の知見が必要だと思ったんです。
快諾してもらったお礼に「何か手伝えることがあったら言ってね」と伝えると、「Work Design Labのイベントに登壇して、働き方改革について話してほしい」と逆に頼まれて。まだ働き方改革について勉強中の身ではありましたが「なんだか面白そう」と二つ返事で了承。よくわからないけれど、面白そうだから巻き込まれてみる。ノリの良さがもともとあったんだと思います。
いざ登壇してみると、50〜60人規模のイベントで交流の時間もあり、予想を越える楽しい会になりました。すると数日後、石川からWork Design Labと書かれた私の名刺が送られてきたんです。こうなったらもう、断れない(笑)。翌年から東京に異動することになったので、Work Design Labでの活動が本格的に始まりました。
「巻き込み力が大事だ」とよく言われますよね。私の場合は、巻き込み力ではなく「巻き込まれ力」によって、新たな活動に足を踏み入れることになりました。自分が立ち上がって物事を始めるには、大きなエネルギーが必要です。そこに足踏みしてしまっているようなら、ユニークな活動をしている友人にうまく巻き込まれてみるところから始めてみるのはおすすめです。
Work Design Labの活動を始めて一番良かったことは、日本を代表するような大企業の中で、会社や社会を本気で変えようとしている若手ビジネスパーソンに出会えたことです。大企業病に負けず、組織の枠を越えて精力的に活動している自分よりもはるかに年下の彼らから、大きな刺激を受けました。自分自身の価値観を見直すきっかけになったと同時に、このような若者をもっと増やしていきたいと考えるようになりました。
外の機会を活用し、本業に活かす「令和の出世」
マネジャーとして若手社員と関わる上で大切にしている考えを教えてください。
それぞれの魅せ場をつくることです。
私はバスケが趣味で、中学から現在までずっとやっていますが、決してうまいわけではないんですね。ではなぜそんなにバスケが好きかというと、チームスポーツなので試合中すべてのプレイヤーに必ず魅せ場が回ってくるからです。自分が目立った活躍をしなくても、ディフェンスでヘルプができたり、パスで味方を活かしたり、抜きん出た個性を持っていなくとも全員が活躍できる。
それは仕事でも同じで、輝ける魅せ場を一人ひとりに作ることが重要だと考えています。また、その人の持ち味をさらに磨き上げるため、外の機会とつなぐことも大切です。結果、組織としての成果を上げ、このチームで良かったと言ってもらえる。そんなマネジャーになりたいなと思っています。
今後どんなことに取り組みたいですか?
「令和の出世」を広めていきたいです。
令和の出世!?
はい。これまでの出世スタイルは、新卒で入社後、社内で与えられた仕事をこなしていきながら少しずつ経験を積み、長い時間をかけて上のポストに登っていく、というものでした。
しかし、変化の激しい世の中において、自分の意思で物事を決めることなく、与えられた仕事だけをひたすらこなし、来たるべき出世の機会を何年も待っているということ自体が、キャリアリスクになり得ます。管理職になれば視界が開けるのですが、その頃にはあっという間に30~40代になってしまう。
そこで私が提唱しているのが、令和型の出世スタイルです。これは、社内にとどまらず、社外活動に積極的に「越境」することで、社内では不足しがちな意思決定機会と内省機会を磨き、本業のキャリアに活かしていくという考え方です。
もちろん、本業でやるべき仕事を120%のパフォーマンスで行うことが大前提ですが、その上で自ら越境し、社外のコミュニティでイベントを企画したり、会社の肩書きを捨てて自分の名前で勝負したりすることで、意思決定力や仕事力はいくらでも磨くことができます。
何より私自身も、これからもWork Design LabやOne G-HRでの活動を通じて、外の世界をもっと見たいし、それを本業でのマネジメントや自らのキャリアにも役立てたいと思っています。
若手社員が令和の出世を目指す際、何から始めるのがいいでしょうか?
社外の勉強会や異業種交流会に参加してみるのがいいと思います。最初は興味がなくても、キャリアや地方創生など、さまざまなテーマのイベントに参加してみたり、友達に誘われたら乗っかってみたり、あるいは手伝ってみたり。まずは場に参加することで、人とつながり、刺激を受けることができる。すると最初はなかった興味がどんどんわいてくると思うんです。
勉強会やイベントへの参加といった越境体験後には、内省の時間をとることがとても重要です。「自分はいま何に興味があるのか」「面白かったとか、期待はずれだったとか、感情が動いたのはなぜか」を自分に問いかけることで、価値観は磨かれます。その価値観のもとで本業に向かうと、これまでとは違った行動が生まれ、パフォーマンスアップにつながります。令和の出世は「越境する」「内省する」「本業に活かす」の繰り返しです。
「なぜ」を自分に問うのは、容易なことではありません。だからこそ、問いを投げかけてくれる「壁打ち」相手の存在は大切です。令和の出世を広めるにあたり、これからも多くの若手社員との壁打ちを通じて、彼らの持ち味を引き出すことに貢献していきたいと思っています。