角田 剛史(すみだ たけし)
株式会社ベーシック執行役員。ソニーにて法人営業や経営企画を経験。在籍中にアメリカ現地法人の管理部隊責任者として3年間アメリカに赴任し、赤字事業の立て直しを実行。帰国後ディー・エヌ・エーに入社し、海外向け新規事業の責任者としてWebサービスを立ち上げ、月間1.4億ページビューを超える規模に育て事業を収益化。その後ベンチャー企業の創業期メンバーとして家具のサブスクリプション事業の立ち上げを行う。2018年にベーシックに入社し、経営企画機能をゼロから立ち上げ。現在は人事以外のコーポレート機能全てを管掌。
大企業出身だからこそ気付いた小さな会社の面白さ。そしてベーシックにたどり着いた
現在のお仕事内容について教えてください。
株式会社ベーシックにて、執行役員としてコーポレート部門を管掌しています。見ている範囲は、経営企画・総務・広報・法務・経理・財務・内部監査と幅広く、それぞれの部門についている担当をマネジメントする立場です。
ベーシックに入社したのは2018年8月なので、もうすぐ2年を迎えます。当初は、新規事業の責任者として入社しました。しかし、入社後数ヶ月経つと、今のベーシックに本当に必要なことは、新たに事業を足すことではなく、手が回っていないコーポレート部門を強化することだと認識するようになりました。それにより、むしろ既存事業の成長を最大限サポートすべきだと。
そこでまずは、「経営企画」機能をゼロから構築。その後徐々に管掌範囲が広がり、今のようにコーポレート全般を見るに至っています。
ベーシックへの入社経緯を伺えますか?
先にベーシックに勤めていた元同僚の紹介で、代表の秋山と食事をしたことがきっかけでした。「世の中の問題を解決し、よりよい明日を作っていきたい」という秋山の強い思いに惹かれました。「この会社なら、本当に世の中を良くしていけるのではないか」と思ったのが最初の印象でしたね。
秋山はそのとき、自分のビジョンを新規事業として具現化してくれる人間を探していました。当時ベーシックは、会社のミッションである「問題解決」の軸として「Webマーケティング」をより鮮明に打ち出し始めており、その領域に対する攻めを強化しているフェーズでした。
社員数にして万単位の大企業から一桁のスタートアップまで、これまでさまざまなフェーズや規模感の会社で事業側とコーポレート側を行き来してきたことから、自分であればこれからのベーシックの成長に応じて柔軟に貢献できるイメージが湧いたということが、最終的には入社の決め手になりました。
さまざまな規模感の会社を経験されたとのことですが、ベーシックに入社するまでのキャリアについても教えてください。
元々は日本の素晴らしい製品を世界に届けていきたいという思いがあり、新卒から10年以上ソニーで働いていました。その間、アメリカに3年間赴任し、子会社の管理部門責任者として赤字事業の立て直しに参画。
若くして現地の社員をマネジメントする立場になり、WalmartやBest Buyなど、アメリカの大手小売企業を巻き込んだサプライチェーンマネジメントの改革を行いました。海外の子会社で働くことにより、日本の本社ではすぐには得られない大きな裁量権を持って経営改善に取り組めたことは、その後のキャリアに多大な影響を与えました。
それまで本社で数千億円という莫大な規模の事業を経営企画という立場で数値として “管理” はしていましたが、「むしろ規模の小さい会社のほうが、その数字を自分の取り組み次第で直接 “改善” させることができて面白い」と感じたんです。
そのような経験から、アメリカから帰国後、当時社員数が1500人程で、日本で大きく成長したモバイルゲーム事業の海外展開に注力し始めていたDeNAに転職しました。自分がそれまで携わってきた日本の優れたサービスを海外に広めていくという取り組みを、より若い会社かつ変化の激しい業界で試してみたくなったからです。
DeNAの中でも特に立ち上がり間もなかった海外事業部は、海外事業を成長させるために必要な業務であれば、自分の担当領域に拘らず全員で拾い合うような環境でした。ソニーでは主に管理部門を担当していた私も事業開発やゲームディレクションまで担当し、最終的には世界最大級のアニメ・マンガの海外向けファンサイトの開発・運営を行う事業責任者を務めることになりました。
その後、DeNAが海外事業自体の縮小を決めたことをきっかけに、「海外展開 × 小規模」をより追い求めて、シンガポールに本社を置く社員数一桁台のスタートアップに参画。ここではDeNAの海外事業以上に、かちっと決まった役割というものは存在しなかったため、「会社の成長のためにできることは何でもやる」という今の私のスタンスが、ここで一気に加速することになりました。
経営企画の役割は、みんなのためのジャングルガイド
ベーシックでの経営企画の立ち上げはどのように取り掛かったんでしょうか?
入社当初は、元々責任者として任命された新規事業の立ち上げ準備に主に時間を使いながら、20%くらいの工数でいわゆる経営管理周りのサポートを並行して行っていました。しかし、2~3ヶ月経つと、組織の急成長に追いつくための課題が山積みの経営管理側の比重をむしろ大きくしたほうが、会社に対する貢献余地が大きいことがわかってきたんです。そこで秋山と議論し、経営企画室を部署として新たに設立することにしました。
これまでの私のキャリアで経営企画自体の経験はあったものの、その立ち上げについては初めて。実は私もはじめは少し手探りの状態でした。大企業にとっては経営企画という部署はすでにあって当然のものである一方、小さなスタートアップでは社長や経理の業務に内包されていることがほとんどで専門の部署は存在しません。
感覚的には、経営企画の機能が必要になるのは社員数が100人を越えたくらいで、ベーシックはまさにそのタイミングを迎えていながら、その重要性に気付けていない状態だったんです。これまでの複数社の経験を総合しながら、ベーシックのフェーズや状態を勘案したときに、立ち上げにあたって必要となる経営企画機能とは何かを少しずつ定義していきました。
経営企画という仕事は一般的にはイメージしづらいと思うのですが、私は、「経営企画とはジャングルガイドのようなもの」だと思っています。会社が小さいうちはシンプルだった業務が、事業の成長によってまるでジャングルのように肥大化し、複雑になる。どんな情報がどこにあるのか、そもそも今向かっている方向は正しいのかといったことが、わからなくなってきてしまうんです。
当時のベーシックのように、ジャングルガイドが存在していなかった場合、まず行うのは、
- どちらがジャングルの出口かを指し示す(事業計画・中期計画の策定)
- 歩いている道の誤りを指摘、指導する(予実管理)
- 効率的に歩けるように先頭に立って草木を伐採する(業務改善・基盤整備)
- 食べ物や水分の補給を適切に行う(資金調達)
ということだと考えています。どの会社でも、現場のメンバーはそれぞれの業務を一生懸命行っているものです。ただしその活動が目標達成に向けて、有機的につながっていなかったり、非効率だったり、ともすればいつの間にか違う目標を目指していたりということは往々にして起こります。
とにかく目指す方向を明確にしつつ、仕組み化・効率化により現場が目の前の本質的な業務に集中できる体制を整える、言い換えると、まさにベーシックが理念として掲げる「問題解決」を、この2年かけて行ってきたわけです。
ベーシックで執行役員として働く上で、角田さんのモチベーションになっていることは何でしょうか?
私がアクションを起こした結果、「ベーシックが会社としてよくなっていることを実感できること」ですね。ここは前述のアメリカでの経験から大きく変わってはいませんが、今コーポレート全般を幅広く管掌するようになった中で、それを実感できることがより多くなっているのはありがたい限りです。特にその結果、周りで一緒に働いている仲間がよりいきいきと働いていたり、成果を出してくれたりするのを見るということが今の最大のモチベーションです。
ベーシックに入るまでは、周りの仲間のためというよりは、とにかく損益をいくら改善させるかとか、仕組みで業務効率化をどの程度実現させるか、という事業寄りの観点が強かったですし、どちらかというと、そのような「経験」に仕事の面白さを感じているところがありました。
実はベーシックは、私が入って以降、離職率が一時期40%を超えるようなある意味危機的な状況に陥ったこともありました。今ではそれも適切なレベルに落ち着き、社員が一丸となって事業成長に向けて取り組んでいます。もちろん今回お話しているような私の活動だけではなく、他の経営陣を始め、全社で取り組んだ結果です。
こうした変化を通じ、これまでの自分の経験を最大限活用して、いかに会社やチームを良くできるかというところにモチベーションが移っていると感じます。これは、ベーシックで働き始めてからだと、改めて振り返ると思いますね。
最後に、今後挑戦したいことについて教えてください。
引き続きとなりますが、「会社の成長に必要なあらゆることを何でもやる」に尽きます。ベーシックは、これからもまだまだ成長していく会社です。IPOも視野に見据えながら事業運営を行っています。そういう意味ではIPO自体ももちろん大きなチャレンジにはなりますが、それもあくまで今後の成長のための手段であり通過点だと考えています。
今回は主に経営企画機能立ち上げのお話をしましたが、それ以外でも、会社知名度に課題があるとなれば採用広報としてTwitterでの情報発信を全社的に取り組む活動を起こしたり、運営が立ち行かなくなり廃止寸前となれば社内報の再生を行ったり、全社会議がマンネリ化し盛り上がりに欠けているとなればイベント運営者としてテコ入れしたりと、裏では文字通りあらゆることをやっています(笑)。
実は「経営企画コミュニティ」というものを部下と一緒に立ち上げ、1年以上運営しています。様々な会社の経営企画関連の仕事をするメンバーが300人以上参加しており、経営企画を始め、日々コーポレート業務に関する質問や相談をする場になっています。
Twiitterしかり、コミュニティ運営しかり、一見すると経営企画の業務には関係ないかもしれませんが、これらはすべて何かしらの問題解決、つまりベーシックの目指す「世の中の問題を解決し、よりよい明日を作っていく」ということにつながると考え行動しています。これからも様々な領域の中を反復横飛びしながら、問題解決に取り組んでいきたいと思います。