のぞみさん


メガベンチャーの人事部にて、中途採用業務を担当。国家資格キャリアコンサルタントとして、社外の人材開発ワークショップの企画・運営にも携わる。


魂を込めたスカウト文を通じてご縁を生み出す

現在のお仕事内容について教えてください。


メガベンチャーの中途採用を担当しています。主な業務は、採用候補者のスカウトです。自社専属のヘッドハンターのような役割で、求職者データベースを検索し、当社の選考を受けてほしい方々に日々スカウトメールを送っています。


また、人材を採用したい部署と要件を定義することも重要な仕事の一つです。採用難の時代、「あれもこれもほしい」というスタンスでは、なかなか求める人材を獲得できません。どのような人材がいつまでに必要なのかをすり合わせることで、精度の高いスカウトを送れるようになるわけです。


この仕事の醍醐味は、何と言ってもスカウト文で「違い」を出すこと。優れた人材は、日々何十件ものスカウトを受け取っています。その中から選ばれるのは容易ではありません。だからこそ、テンプレート文を一斉に送信するのでは決してなく、一人ひとりのプロフィールや経歴をしっかりと拝見し、「どうすれば弊社の魅力を伝えられるか」を考えながら一通ずつ魂を込めて書いていくんです。


とかくデジタルでのコミュニケーションは誤解を生みやすく、ドライになりがち。だからこそ、パソコンの向こうには生身の人間がいて、その人に向けて書いてるんだと常に意識して、気持ちがしっかりと伝わるように言葉にこだわり、気を引き締めて書くようにしています。「いただいたスカウト文が嬉しくて受けに来ました」と面接で言っていただけるときが一番報われる瞬間です。私のスカウト文がなければ、決して実現することのなかった出会いですから。


また、私が送ったスカウトがきっかけで入社した人が、実際に社内で活躍している姿を見ることも大きなやりがいです。ほっと安心するというか。実はこれは、人事として転職した最も大きな動機の一つでもありました。もともと私は前職のリクルートで、スカウトメール送信代行サービスの企画営業を担当していました。ただ、スカウトを送った求職者が実際にクライアント企業に転職した後の姿を見ることができないことをいつも残念に思っていたんです。

のぞみさんは、キャリアコンサルタントの国家資格もお持ちですよね。こちらもお仕事と何かつながりがあるんでしょうか?


はい。スカウトがきっかけで入社した方に社内で活躍していただくために、もっと私が貢献できることを増やしたいという思いで資格を取得しました。せっかく入社していただいても、社内カルチャーや社員とうまく馴染めなければ、お互いに不幸な結果になってしまいます。そのようなミスマッチを完全になくすための組織づくりやカウンセリングにも仕事の幅を広げたいと思っています。

編集者志望から人材業界へ

キャリアに関心を持ったきっかけがあれば教えてください。


高校生の頃、通帳に刻まれた私の学費を親に何気なく見せられたことがきっかけです。「私にもこんなにお金がかかっているんだ」というリアルな事実を目にしたとき、果たしてこんなに稼げるのかなと心配になりました。キャリアやライフプランに関心を持ち、真剣に考えるようになったのはそのときからです。


リアルな事実にハッとされたんですね。当時はどんなキャリプランを描いていたんでしょうか?


実は私、編集者志望だったんです。父とよく図書館に行ったことから、私も本に関わる仕事がしたいという気持ちが強くなって。高2のときには『リクルート進学ブック』の学生ライターに応募して、レポートを書いたり、実際に編集の仕事をしている方々との交流を深めたりしていました。


大学に入学してからは、本格的に編集者を目指すべく、『編集会議』が運営するプロ養成講座に通いました。雑誌の企画を考えたり、インタビューしたり、毎週のように課題が出る実践的でハードな講座でした。


受講生の中で私が唯一の学生という環境で、毎週なんとか這いつくばってついていきました。でもついに、どうしてもある課題をやりきれず、途中で挫折してしまったんです。「この課題をこなせないようでは、編集者になるなんて無理だな」と思って、高校生からの夢を諦め、卒業後は携帯ショップ販売員の仕事に就きました。


そこからどのようにして人材に関わるお仕事に至ったんでしょうか?


転機になったのは最初の転職です。成長意欲やコミュニケーション力が評価され、転職エージェントに紹介されたリクルートの人材紹介事業の営業職にキャリアチェンジ。スカウトメールのプランナーになったことが現在の仕事につながっています。


当時、候補者へのスカウト文を書くことは未経験からのスタートでしたが、やればやるほど自分に向いているなと手応えを感じました。もともと文章を書くことは好きでしたし、何より「文章を通じて誰かの心を動かす」という点で、学生時代に諦めた編集の仕事と共通するものがあると感じました。まさかこのような形で過去の点がつながるとは思っていませんでしたが、この仕事に出会えて本当に良かったと思っています。

最後に、今後挑戦していきたいことを教えてください。


引き続き人事としてできることを増やしたいと思っています。今は中途採用のスカウト業務に特化している状態なので、今後は取得したキャリアコンサルタント資格を活かしながら、リクルーターや組織・人材開発などにも挑戦したいですね。


また、人生100年時代を生き抜くためにも、会社の枠組みを越えて必要とされ、誰かの役に立てる人材にならなければとも感じます。最近は、社外で人材開発ワークショップの企画・運営にも携わるようにもなりました。こういった活動の幅も広げることで、毎日を楽しみながら将来にもつながるようなキャリアを歩みたいと思っています。