小西 祐介(こにし ゆうすけ)
現在Remember代表として人事コンサル×コーチング×営業代行などを行う。20歳から営業をスタートし24歳で起業→廃業を経験。26歳で入社した会社で人材紹介事業を立ち上げるとともにコーチ型マネジメントに出会い、人の成長に携わることの面白さを知る。「人が輝く場所を創ること」をポリシーとして1年半前に2度目の独立。
「もう起業なんてしない」からの2度目の独立
現在のお仕事内容について教えてください。
人事コンサルとして、採用と人材開発を中心にクライアント企業の人事部を支援しています。そのかたわら、個人向けのコーチングも行っています。
採用・人材開発の知見は、会社員時代の人事経験と人材紹介事業の立ち上げ経験から身につけたものです。人材エージェントとして経営者の方と頻繁に話をしていた当時、「人材の紹介だけではなく、うちの人事制度全体を見直してくれないか」という依頼を次第にいただくようになって。そういった取り組みから、人事業務や人材開発に関する幅広いノウハウを磨くことができました。
小西さんは現在の会社の前にも1度の起業を経験されているんですね。
はい。24歳のときに初めて起業したものの思うようにいかず、「もう二度と起業なんてしない」と一旦会社員に戻りましたが、昨年再び起業して今に至ります。1度目の起業は、大学を中退しているというコンプレックスをバネにしたものでした。
大学中退をバネに。
はい。僕は幼い頃から野球をやっていて、野球推薦で大学までエスカレーター式に進学できる高校に入学したため、人生で1度も受験勉強に追われたことがないんです。その結果、何の目的もなく大学に進学し、学びたいこともやりたいこともない。そんな状態でアルバイトを始めてお金を手にすると、働くことの面白さに浸ると同時に、大学からはどんどん足が遠のいていきました。
退学を決めたときは、まさか学歴でこんなにも世間の風あたりが強くなるとは予想していませんでした。「とんでもないことをやってしまった」と気付いたのは、就職活動に直面したときでしたが、まさに後悔先に立たず。
「このままでは負ける。」そんな怖さから求めたのは、成長のスピード感でした。経営者としていち早く独り立ちすれば、大卒の人たちを一気に追い越せるんじゃないかと。
とはいえ、プログラミングなどのスキルを持っていたわけではなく、ものを作ることはできません。そこで「ものを売ることができれば会社を回せるはずだ」と、営業を専門とする会社に入り、ものを売る力をまずは徹底的に磨くことにしました。その後、部下ができるほど営業のスキルを伸ばした上で、会社の大きな方向転換を機に退職して起業しました。
ところが、結果的に最初の会社は2年でたたむことになってしまいます。資金繰りがかつかつの中、掲げた理念よりも目先のキャッシュ獲得に必死になった結果、何のために会社をやっているのかを見失ってしまったんです。会社員時代に美容室のプロモーション事業を手掛けていたことから、その人脈を活かして美容室の名刺作成からホームページ制作まで、できそうな仕事は何でも受けましたが、まったく安定せず。10日後に給料日を控えているのに、手持ちの現金が200万ショートしていたこともあります。実力不足を実感し、「もう起業は絶対しない」と心に決めました。精神的にも完全にまいってしまっていました。
会社をたたんだ後は、飲食業のコンサルティングを手掛ける会社に就職して再出発。新規事業として、人材紹介事業の立ち上げを経験しました。
その後、どのようにして2度目の起業に至ったのでしょうか?
2度目の起業は、当時の上司の独立に誘われたことがきっかけになりました。僕の過去の失敗経験を活かせると思い、「自分が経営者じゃないのならいいか」と、取締役を引き受けることにしたんです。ところが、取締役に就任して1年半ほどたった頃から元上司である社長との方向性が噛み合わなくなるのを感じました。その会社を去ると同時に、2度目の起業に至ったわけです。
また会社員に戻る選択肢もあったかと思いますが、2度目の起業を決意されたのはなぜですか?
それまで、人材紹介や人事コンサルに携わる中で、社会全体においてこれからの働き方が大きく変わろうとしていることをぼんやりと感じていました。個人がプロジェクトやコミュニティ単位で仕事を進める時代になり、会社や組織にとらわれないようになっていくのではないかと。本当にそんな時代が来るのかを自分自身で試してみたいと思ったのが2度目の起業の一番大きな動機です。
また、改めて1度目の起業を振り返ってみると、結果的には失敗に終わったけれども、挑戦したこと自体はまったく後悔していないことに気付いたんです。やらなかった後悔は後悔のままですが、やった後悔はいつか財産になると、失敗から数年を経て思えるようになりました。
パワハラ中心の環境で、人を育てることの大切さに気付く
小西さんは個人向けにコーチングもなさっているとのことですが、何がきっかけだったのでしょうか?
会社員時代、人を育てるという意識が乏しい環境でたくさん辛い思いをしてきたことがきっかけです。特に大学中退後に入社した会社はいわゆるブラック企業で、毎日終電帰りが当たり前。成果を出せないと人間扱いされませんでした。僕は野球部出身で、ある意味そういう気質に慣れていたのでなんとか耐えられましたが、離職率は9割以上。マネージャーは部下をマネジメントすることは決してなく、自分自身が成果を上げるために精一杯でした。
僕自身もマネージャーを経験し、正直、自分がされたような恐怖支配のようなマネジメントを部下に対してしてしまったこともあります。でも、それでは人は育ちません。
結局、1人がどんなに頑張ったって限界があるんです。自分が高い成果を出し続けるよりも、同じくらい高い成果を出せる部下を5人育てたほうが、再現性も持続性も絶対に強いはず。そんなときに出会ったのがコーチングでした。
2度目の起業から1年。現在はどんな思いで仕事に取り組んでいますか?
人事コンサルとコーチングという2つの軸で、多くの人が輝けるようにサポートしたいと思っています。働き方が多様化しているということは、幸せのあり方も多様化しているということです。いろいろな幸せの形があるのに、社会の荒波や組織上の問題で、幸せではない方向に無理やり自分を合わせてしまっている人は少なくありません。働きながら人の人生を豊かにし、その過程で企業の成長にも貢献する。そんな支援ができればと思っています。
また、コーチングで個人に対する支援をする中で感じているのは、キャリア教育の重要性です。大学を中退したからこそ思いますが、学生時代にこそやっておくべきことはたくさんあります。今後は、学生や若年層に対する教育活動やコーチングにも力を入れていきたいですね。